TeXの記憶(81) — ヤクモノの調整

印刷用語では、+、=、のような「普通の」文字でないものをヤクモノといます。TeXでこれらを出力するのは何でもないことなのですが、ある書籍の担当者が「+や−の位置が低すぎていやだ、もう少し上にしたい。ついでにαも大きくしてほしい」と言い出しました。

TeXで組版するようになったころ、インテグラルや分数の横棒などなど、従来の日本の組版と見た目の異なるものに拒否反応を示した編集者も少なくありませんでした。知り合いのK出版社にいた編集者は著者が作成したTeXの文書をわざわざ電算写植で組み直すという荒業?をとっていました。

そんなことも過去になったのですが、今でもこだわる編集者が残っています。

ほとんど対応することがありませんが、微妙に設定したマクロを紹介します。vfから手を入れればもっと簡単かもしれませんが、1冊だけのためにどうしよう、と迷ってマクロにしました。

% <を上に上げる
\newcommand{\Zle}{\mathrel{\raisebox{.12ex}{$<$}}}
% 中央の×
\newcommand{\Ztimes}{\mathrel{\raisebox{.12ex}{$\times$}}}
% 中央の=
\newcommand{\Zeq}{\mathrel{\raisebox{.12ex}{$=$}}}
% 中央の∞
\newcommand{\Zinfty}{\raisebox{.15ex}{$\infty$}}
% 数式を上げる
\newcommand{\emUP}[2]{\raisebox{#1}[\z@][\z@]{$#2$}}
% 上付マイナスを上げる
\newcommand{\Zminus}{{\scriptsize\raisebox{.12ex}{$-$}}}
% 上付プラスを上げる
\newcommand{\Zplus}{{\scriptsize\raisebox{.1ex}{$+$}}}
% 別なサイズのα
\newcommand{\Zalpha}{\mbox{\fontsize{15Q}{15H}\selectfont$\alpha$}}

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上が調整したもの、下はTeXのデフォルトです。見た目はほとんど変わりませんが、担当者は納得したようです。

やればいろいろできるのですが、そのためのコストのことも思い浮かべてくださいね。

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